UXデザイン連続セミナー #1「実践的デプスインタビュー技法」 参加レポート

新しい挑戦として、UXデザインの知見と経験を得るのために全5回のUXデザイン連続セミナーに参加することにしました。
今回は2019年8月31日開催の第1回のレポートです。

目標を設定する

「今日はこんなことを持って帰るぞ!」という目標がないとだらだらと聞いて終わってしまいそうだったので、セミナー受講の目標を設定しました。

  • 制作するWebサイト/アプリ開発に付加価値を与えたい。
  • 成果を出せるアウトプットをするための技術を身につけたい。
  • バラバラに勉強したワークショップなどの知識を体系化したい。

明日から使える知識が欲しい!というよりは、長く戦っていける武器のひとつとして捉えています。結果的には、受託制作でのヒアリングで今すぐ使えるテクニックも身につきました。

Section.1 セミナー

デザインリサーチの分野に長く携わられる井登友一先生から、UXデザインの概論として広い分野のお話を伺いました。約2時間のお話の中から気になったトピックをピックアップします。

モノから経験への移り変わり

「経験経済(製品ではなく、顧客の情緒や感性に根付いた経験を提供する)」という言葉はUXデザインを勉強していると触れる言葉ですが、今回はもう少し現代社会に突っ込んだお話を聞けました。

コーヒーを例にした経験経済の話だと、コーヒーカップなどの器へのこだわり、コーヒーを入れてくれるマスターの受賞歴やキャリアを「経験」と捉えます。しかし、SNSが普及した現代の場合は「SNSにアップして、自分のこだわり・自分はこんな人であるという表明をする」ところ(=変身願望)まで、さらにそこから価値観の近い人との関係性に繋がっていく例が挙げられました。

Instagramをライフログとして活用する身としては身につまされるお話でしたが、ライフログも「似たシチュエーション・価値観の人に情報を提供したい」という気持ちがあるので立派に経験経済の一端を担っています。

不便益とユーザー体験

「ユーザー体験」という考え方がモノ作りに根ざして30年ほど経ち、世の中のモノやサービスはすでに改善されつくされてきました。一見余計に見える一手間や時間をかけさせることで、ユーザーの体験を改善するというアプローチがあることを知りました。

不便益(benefit of inconvenience)とは、「便利の押し付けが、人から生活することや成長することを奪ってはいけない」という理念のもと、「快適で心地よく、簡単で便利に」という観点以外からのアプローチをおこなうことです。

ヒューストン空港の手荷物引渡所を例に

空港の手荷物引渡所といえば、待ち時間が長いにも関わらず「もうすぐ荷物が出てくるかも…」と思うとその待ち時間を有効活用できない少し困った場所です。ヒューストン空港では、あえて搭乗口から手荷物引渡所への道のりで回り道をさせて、引渡所に着くころにちょうど荷物が出始めるという解決策を取りました。

乗客の動線はなるべく短く・早く・快適にと考えがちですが、「手荷物引渡所でのストレスを減らす」という明確なゴールが設定できればこういうアプローチもありです。

ヒューストン空港については、株式会社スタンダードのUXデザイナー 鈴木智大さんが2014年に書かれた考察記事が面白かったのでおすすめです。

空港の待ち時間を解決したデザインへの考察 | UXデザイン会社Standardのブログ

Section.2 実践的デプスインタビュー技法

デプスインタビューとは通常のインタビューでは得られない、個人の考え方や心理、感情を聞き出す質問技法です。質問に対する回答だけでなく、その時の表情や仕草、間の取り方などの非言語的な要素まで記録します。

良いデプスインタビューのための10のTips

  1. 「何を知るための調査か」を明確にする(仮説を立てておく)
  2. 「ラポール」と「ムード」がすべてを決める(一期一会でも信頼関係を築く)
  3. 「共感」と「理解」を忘れない(でも、しかし等のワードに注意!)
  4. 「誘導」しない(山の山頂だけを示して、登り方は任せるイメージ)
  5. 生活者は「ニーズ」を語るプロではない(うまく言葉にできなくてOKという姿勢を明確に)
  6. 被験者に「弟子入り」しよう(親方のしていることを見て盗むイメージ)
  7. 生活者は平気で「嘘」をつく(ありがちな表現が増えてきたら要注意)
  8. 「なぜ?」を繰り返そう(3〜5回掘り下げてみる)
  9. 被験者の「過去〜現在〜未来」をタイムトリップしよう(時間軸をずらすと話題が広がる)
  10. 百聞は一見に如かず(表情などの情報は有用)

場の空気作りのコツもですが、特に仮説を頭に置くこと、質問設定の方法が受託制作でのヒアリングに活かせそうです。

被験者(インフォーマント)としてインタビューを受ける機会をいただいたのですが、こっちが面食らうくらい踏み込んでくる質問者も「この人はこういうスタンスなんだな」と納得できれば却って答えやすいケースもあったので、インタビュアー担った時は遠慮がちにならないようにしたいものです。

長期的に役立てられそうな知識、短期的にでも使えそうなTipsを頭で整理しながら聴いていたら8時間があっという間でした。次回は9月14日開催予定です。

イベント詳細:HCD-Net東海 UXデザイン連続セミナー(2019年)